寒記亭日記

日々の事を色々

捏造の科学者 STAP細胞事件

科学における不正行為について、まず私が脳裏に浮かべるのはヘンドリック・シェーンによる高温超伝導研究、世に言うシェーン事件である。

シェーン事件はこれまでよりもずっと高い温度での「高温超伝導」を可能にしたという論文が、すべて虚偽だったというものだ。シェーンの論文を再現しようとしてもできず、多くの科学者は再試に成功しない自分の力量が足りないと考えたという。だが、ある時「彼の論文はおかしい」ことを指摘するものが現れた。グラフがあまりに綺麗すぎる、別の論文で使ったグラフを引き伸ばしたり加工するなどしてまた利用しているのではないか、と。

そしてシェーンの捏造は暴かれた。彼だけが一人で行った実験の装置はとてもではないが彼が主張するような操作はできない。また、彼は「実験で作った成果物」をついに見せることができなかった。

彼は博士号を剥奪され、またベル研究所から懲戒処分を受け科学研究の場から姿を消していった・・・

どうだろうか。STAP細胞事件との類似を思いこさせないだろうか。だが私はSTAP細胞事件とシェーン事件には非常に大きな違いがある、と本書を読み考える。それは、ベル研究所理研の、あまりにも違う「発覚後の対応」だ。

この本では「発表」からの「記者の側からみた」出来事が並んでいる。単に批判したいというのではなく、何が起こったのか、真相は何かを調べようとする姿が浮かぶ。

この事件を追った科学記者の須田氏は理研の対応に疑問を投げかけている。例えば検証委員会の議論の公開について、理研は「一部を削除」するようなことをした。あるいは野依氏の不可解な行動、あるいは外部からの批判に対しての鈍感さ―一つの事件の裏には、膨大な「それが起こってしまった理由」が眠っていることがわかってくる。そして、本書でも触れられているがシェーン事件の「結果」との違いについて思いを巡らせざるを得ない。

この事件の背景を考えるためにも、一読をおすすめしたい。

捏造の科学者 STAP細胞事件

捏造の科学者 STAP細胞事件