江戸しぐさの終焉
江戸しぐさの「正体」を示した前著から一年半が経過した。この本が嚆矢となり「偽りの伝統」が社会に入り込み、蔓延ろうとしていた状況は徐々に変わりつつある。
「江戸しぐさの終焉」では、この江戸しぐさなるものがどのようにして社会に広がっていったのかを追い、またその過程で姿を見せる「現在、日本の教育を蝕んでいるもの」についても言及されている。
思えば教育はこういったトンデモに弱い。水からの伝言、ゲーム脳、親学、江戸しぐさといったものはもとより、EMの散布といったニセ科学も入り込んでしまっている。それはどうして起こってしまうのか。そこには何らかの共通項があるのだろう。
私は「感動的ならばいい」「子供・生徒に対して教えたいことに使えれば真偽はどちらでもよい」といった怠慢もその一因ではないかと考える。ことに前者は教育を超えて社会全体に蔓延する病である。感動的なエピソードが実は嘘だった―そんな事例は幾つも思い当たるのではないだろうか。
たとえ江戸しぐさが教育の場から、そして社会から姿を消したとしても、「江戸しぐさ」を蔓延らせてしまったことへの反省がなければ、すぐにでも次の「イツワリ」が現れるだろう。